メルマガ 20/10/22 Enzo

 

タイトル

N.017      Enzo


 

これまでに、友人の死に合わなかったわけではない。

でも…今回は違う。

30年前にPaoloの友人のお葬式に行った、

でも、彼とは1,2度会っただけの、Paoloの友人だった。

 

7,8年前にゴルフをしている最中に心筋梗塞で亡くなった方がいた。

その人ともよくラウンドしたけれど、かなりの高齢だったし、

お気の毒と言うより、大好きなゴルフをしている最中に

ほぼ、ご自身も気づかないうちに召されたのは幸いではないかとさえ思った。

 

でも…今回は違う。

 

Enzoとは、彼がゴルフを始めたときからの知り合い。

当初から感じのいい人だった。

テニスをしていた彼はゴルフもすぐに上達した。

だからすぐに、良い意味でのライバルにもなった。

 

私が、IBIZAへのチケットを手にした時、

彼は1点差で私に席を譲った。

そして、翌年。

同じコンペで、彼が見事に優勝して、ギリシャのクレタ島へのチケットをゲット。

私は自分のことのように嬉しかった。

他の誰でもない、彼に行ってほしかったから。

彼は、私にクレタ島の帽子を買ってきてくれた。

彼もまた、もしも自分が行けなかったら私に行ってほしいと思うコンペだったのだ。

 

正確なお年は知らないけれど、私とほぼ同年代だと思う。

 

何度か、カップル競技の時に一緒にラウンドして、入賞したこともあった。

奥様も気さくな方で、一緒にでない時には「どうして?」と心配顔だった。

 

初孫が生まれた時には、もうメロメロで、誰かれ構わずふれ回り、

お宮参り、じゃなくて洗礼式の後のお祝いはクラブハウスでなさったほど。

私は気持ちばかりのお祝いの品を送っていたので、

そのお祝いの席にも呼ばれて、ほぼ親戚扱いを受けたのだった。

 

まだ、歩くこともできない小さな孫に、子供用のゴルフセットを買っていたEnzo。

 

彼は物知りで、特に機械やITに強かったので、

そういう面でも私と話があうと言うか、他の友人たちにとって、

彼と私が、スマホやインターネットでで困ったときの

友人たちのお頼みどころとなっていた。

(これからは私ひとりで対処するの?)

 

とにかく、人助けに余念がないと言うか、

誰かが、何かを頼んだらぜったいに「NO!」とは言えない人なのだ。

 

明るくて冗談好きで、人のために尽くすので、

すぐに、自ずとゴルフ場でも人気者になった。

 

 

今日は、Silvioさんと二人でラウンドしていた。

Enzoは、仲良し4人組で対決試合があると言っていた。

我々が15番ホールのグリーンについた頃、

池を挟んだ反対側の6ホールに、ゴルフカートが3台、

他にも人が集まっていて、「どうしたの?」

とSilvioに聞いたら、「誰かが、具合悪いらしい」

そこへカートでやってきた若者に、『誰?』と声も出さずに

ジェスチャーで聞いたら『Chicco(キッコ)』と、

やはり声は出さないけれど、唇で判明。

 

NO! No No No….

 

もちろんどなたが倒れても申し訳ないけれど、

よりにもよってEnzoが!

(Chiccoはこちらの乳幼児向けの商品を扱う会社で、

彼はそこの流通を仕事にしていたから、そういういニックネームになったもよう。)

 

それを知るとすぐにSilvioが、近づかないほうがいいと私に言った。

彼と仲が良かった私のことを気遣って、離れたところから見守ることにしたのだった。

 

救急車のサイレンは聞こえるけれど、なかなか姿が見えない。

待っている間も、友人のひとりが心臓マッサージをしたり、

ときには口移しの人口呼吸をしたりしていた。

 

一緒にラウンドしていた中には、定年したばかりの外科医もいた。

やっと救急車が来たけれど、引き続き、心臓マッサージ。

そのうち、もう一台の救急車が。

先にやってきたのは小さな救急車で、きっと設備が十分では無かったのだろう。

でも、その救急車は草の上を滑ってすぐにはたどり着けず、

中から機械を取り出して、若者が持って走って。。。

 

そういうさまをつぶさに見ながらも何もできないじれったさ。

ただただ、祈ることしかできなかった。

Enzoが入院しているところへ、お見舞いに行って

冗談を言っている風景を思い描いて見たりするけれど、

すぐ後には、葬儀でご家族への弔いの言葉をかける自分がいたりして、

なんとも言えない思いで、ずっと事の次第を見つめていた。

 

一緒にラウンドしていた元外科医は、Enzoとはテニス時代からの仲良し。

その彼がどんな気持ちでいるかということも、私には耐え難いことだった。

 

今、こうしてかなり冷静に事の次第を書いてはいるが、目も鼻も真っ赤に泣き腫れている。

本当に身近な友人の死は初めてです。

これからは、そういうことが増えるのでしょうね。

これまで、そういう目に合わなかったことはラッキーだったのでしょうね。

 

明日は、ローマのゴルフ場へ行く予定でした。

Fiuggiのゴルフ場からは10名ほどが参加することになっていましたが、全てキャンセル。

うちのゴルフ所でも、9ホールのコンペの予定がありましたが、それも延期。

 

彼が、もう起き上がらないとわかって、泣きながらクラブハウスへ戻り、

Enzoと仲が良かった私を、皆が代わる代わる慰めてくれ、

今も泣きながら、こうして忘れないうちにと書き記しているところです。

 

帰宅後、EnzoにWhatsAppでメッセージを送りました。

「Enzo, so che non mi rispondi, ma vorrei scrivere ugualmente.

Stavamo giusto dicendo di andare alla Pace di Segni a mangiare

“Risotto alla scampi” mo che facciamo.

Mi hai dato un p� di palline per regalo di compleanno, era settimana fa.

Ho questo cappello cappelloche mi hai portato da Grecia.

Dobbiamo fare ancora tante gare doppio insieme.

Ora come farei …」

「エンツォ、返事できないことはわかっているよ。

でも、書きたいの。

丁度、セーニのラ・パーチェにテナガエビのリゾットを食べに行こうと言っていたんだよね。

私の誕生日のお祝いにと、ゴルフボールをくれたのはたった一週間前だったよね。

私は、あなたがギリシャから買ってきてくれたこの帽子を持っているわ。

まだまだこれから、沢山のコンペにダブルで参加しようと思っていたのに、

どうすればいいの…」

エンツォと私

 

 


2020年 10月 20日 Keiko


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