出たっきり邦人 1680 あの頃

■□■□出たっきり邦人・欧州編・2019・1127 ■□■□■

      〓ローマの田舎町から〓

        あの頃

1985年5月のはじめにローマに来ました。

住むために。

当初は2,3年のつもりでしたが。(汗)

 

それ以前に、某旅行会社のパックツアーで

アテネ、カイロ、ローマという古都めぐりで

すでにローマとオプションでナポリ・ポンペイにも行ったのですが、

観光客にはホテルやレストランの方々が大歓迎で

何事にも親切に対応してくださいますが、

いざ住んでみると、普通の市場のおばさんや

お肉屋さんのおじさんなどはそうそう親切にもしていられない

と言いましょうか話すのも早いし、方言だし、

もともとこちらはイタリア語なんかなにも知らないでやってきた

ということもあって、当初は随分苦労しました。

 

そして、それ以外に生活の環境が…

日本ですでにふた昔ほど前に経験したようなことに

また遭遇するという不思議な状況でした。

 

中でも電話には不自由しました。

 

日本ではどこにもかしこにも公衆電話がたくさんあり、

もちろんそれらはすべて完璧にその役割を果たしていたのですが、

あの頃のイタリアでは外出先で電話をかけるということが

とても難しかったものです。

 

公衆電話はあるにはあるのですが、その数はひと駅に一台くらいの有様。

しかも多くの場合それがうまく通じないのです。

そう、故障しているのです。

電話線がはみ出していたりして見るからに使えないものから

コインは落ちたのに発信音がしなかったりで、腹が立ちました。

 

町中にたくさんあるBar(バール)という立ち飲み喫茶の中にも

公衆電話はあるのですが、会計のひとに申し込んで

別の場所にある電話に繋いでもらうというちょっと面倒な仕組みでした。

 

日本への国際電話など、小銭を袋に入れて大量に

用意しておかないといけなかったし、

テレフォンカードができてからでも

イタリア語の説明が難しくて難儀しました。

 

そして、なんと携帯電話が登場したのです。

当初は車に備え付けるタイプでした。

それだけでもどんなにか我々の仕事には役立ったものです。

でも、料金が目玉が飛び出るほど高かったのを覚えています。

 

次にでてきたのがブリーフケースくらいの大きなバッテリー付きの

いわゆる携帯電話でした。

巨大なバッテリーを常時持ち歩かなければならないのですから

携帯という言葉には余りそぐわない気もしますが、

それでも我々には大きな朗報でした。

 

しばらくして、ようやく電池を内蔵した携帯電話が登場し、

いまの家庭用の電話の受話器ぐらいの大きさになりました。

 

程なく、SONYからシガレットケースくらいの

超小型の携帯電話が発売され、

当時の銀行員の給料の2ヶ月分ほどの価格でしたが、

清水の舞台から飛び降りることにしました。(笑)

同じ携帯電話を持っているひとには出会ったことがないので

おそらくは余り普及しなかったのでしょう。

 

まだまだ通話料も1分で数千リラしていたように思います。

あの頃のリラは日本円の1/10くらいの換算だったでしょうか?

つまり1分で数百円ですから余り長話はできませんでした。

 

その頃のトラウマでしょうか、未だに私は長電話は苦手です。(笑)

 

そのうちにいろいろなメーカーから小型の携帯電話が出始め、

最終的にはジーンズの内側の小さなポケットに収まるところまで行きました。

小型化合戦はそこまでで、それ以降は機能の充実化が図られたのでした。

 

そうそう、新しく電話をひくとなると電話局へ行って

何時間も待たされた挙句、申込みができた後

何週間も待たされるという有様でした。

その頃は電話会社は半国営の機関だったのです。

 

そのうち解禁になり、各国から電話会社が乗り込んできて、

ようやく申し込み手続きも簡略化され、

通話料金もドキドキしなくても使えるほどになりました。

 

そうなるとイタリアでは一気に携帯電話が普及しました。

 

なぜなら公衆電話がほぼ通用しない環境だったからです。

 

そして、イタリア人はおしゃべりが大好きな国民だからです。

しかも、家族との絆がとても強い人たちなので、

できればずっと一緒に居たいけれど、

仕事だの通学だので、一日のうち数時間離れていなければならない

その数時間の間に、何度も家族と電話で話すひとがいます。

 

息子が遠足に行って帰ってきた日のこと、

「友人たちのお母さんがたは何度か電話をしてきたのに

なぜマンマは電話くれなかったの?」

わたし:「遠足だって学校の授業の一環でしょ?

授業中に電話していいとは思わなかったのよ。」

息子は納得してくれましたが、そういう状況なのです。

 

もちろん仕事先にも妻たちは何度か電話をし、指図をします。(笑)

ゴルフのコンペ中にもプレーのでき具合を聞いてくるのですからお手上げです。

 

でも…

いい時代になったものだと思います。

息子も3年ほどアムステルダムに住んでいた時期があり、

そんな遠くに住む息子とも、その気になればいつでも声が聞けるし、

ヴィデオチャットだってできるのですから。

 

そんな携帯電話がスマートフォンになり、更に便利になりました。

今やポケットの中にパソコンを持ち歩いているようなものです。

ただ、昔は家族と数人の友人たち、関係の深い場所のいくつか

それくらいの電話番号は頭の中に入っていたものですが、

今やスマホに頼りっきりで、暗証しているのは自分の電話番号のみ。

マイカーのナンバーだって携帯で確認する有様。

おそらくそれは私の加齢のせいばかりではないと思うのですが…

 

 

***おまけのレシピ***

今日のはレシピとも言えないほどかんたんなものです。

おやつやおつまみに最適な「ブーロ・エ・アリーチ」

ブーロはバターのこと、アリーチはアンチョビのことです。

パンにバターを塗って、その上にアンチョビを置くだけ!

 

相性がいいという代わりに「ブーロ・エ・アリーチ」みたいだね

という言い回しがあるほど相性が良い、つまり美味しいのです。

どうぞお試しあれ。

 

Keiko

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