正確には覚えていないけれど、陽介がまだ子供子供していたから
小学校の終わりか、中学に入ったばかりの頃だったと思います。
ある日、突然Paoloに言われて、Bolognaまで新車を取りに行くので、
古い車と、もう一台下取りに出す車があって、
それを運転してもっていってくれないかと。
シャランというミニバンで、私は一度も運転したことのない車だったし、
明かりの付け方もわからなかったので、
陽介にナビゲーターを頼み、更に自分では走ったことのない
Bolognaへのたびに出たのでした。
今は、Firenze〜Bolgna間は、新しい高速道路が完成して、
幾分真っ直ぐな、広くて距離的にも短く快適になっていますが、
あの頃は、山のてっぺん近くを走るので、高速道路とは言いながら、
2車線の狭い道路が曲がりくねっていたものでした。
行き掛けに、リクイリツィアという、植物の根っこを買って、
それは大人が、おしゃぶりに使うもので、
そのエキスが、あの苦くて真っ黒なお酒であったり、アメであったり
そうそう、日本語では甘草です。
その棒っ切れを口に加えて、つまり歯を食いしばって
なんとかBolognaにたどり着いたのでした。
Paoloは、仕事用に若い頃から何台もメルセデスを運転してきましたが、
まっさらな新車の購入は初めてで、
メルセデス社の受け渡し時の演出も心憎く、
赤絨毯に乗った新車はそれはそれは輝いて見えました。
帰りは家族一緒に新車で快適に返ってきたのでしょう、
もうその辺りは記憶にございません。
それから、あまりその車を使用する機会もなく、
今のゴルフカートでの仕事に移行したので、
家の裏庭に放置されて10年近くが過ぎました。
昨年、仕事用のライセンスを外してしまったので、
そうなると自家用車扱いで、車の所有税が倍になり、
この程、やっと廃車にすることになりました。
まだまだ、モーターや内装は廃車にするにはもったいないのですが、
使うめどもなし、維持費がかかりすぎるので決断した次第です。
いつも止まっていたので、ご覧のようにGooglemapにもしっかり写っているほどです。(笑)
一度も運転したことはなかったけれど、
そして、助手席に乗ることも稀だったけれど、
長年そこにいたものが去っていくのを
見送るのはやはりいささか寂しいものです。
門を出ていくまで見送りました
そして、ずっと駐車していた跡は…
まさしくBuoto(空)です。
「さようなら、メルセデス」