出たっきり邦人 1573 ローマだけの祝日

■□■□■ 出たっきり邦人・欧州編・20180710  1573 ■□■□■

      〓ローマの田舎町から〓

629日  ローマだけの祝日

この原稿は629日に書いています。

この日が何の日なのかというと、ローマの守護聖人

聖ピエトロ(ペテロ)とパオロ(パウロ)様の日なのです。

以降イタリア風にピエトロとパオロに統一して書き進みます。

イタリアはカトリックの総本山を抱える国

厳密に言えばバチカン市国なわけですが、

そのバチカン市国はローマの街の中に存在します。

イタリアの各街にはその街や住民を守る

守護聖人という方々がおられます。

首都であるローマにはその守護聖人がお二人。

ピエトロ様とパオロ様。

イタリアのカレンダーには日本ならさしずめ「大吉」や「友引」

などと書かれている部分に聖人の名前が書かれています。

1365日では足りないくらい聖人たちは大勢おられるので

カレンダーに載らない知名度の低い?聖人たちのために

111日は「全ての聖人の日」

(諸聖人の日)なども設けられています。

少し横道にそれますが、

こういうところから子供が生まれた時に

その日の聖人から名前をいただくことが多いのです。

つまり、629日に生まれた多くの男児は

ピエトロだったりパオロだったりします。

女児の場合はピエラやパオラになります。

日にちは違っても尊敬する聖人、もしくはその街の聖人、

職業によっても聖人たちがおられるのでその聖人の名を

つけることが多いのです。

だからイタリア人の名前には同じ名前がたくさん。

その分苗字は複雑怪奇ですがそれはまた別の機会に。

また、自分の誕生日以外に同じ名の聖人の日に

誕生日と同じように祝ったりする

Onomastico(オノマスティコ)という習慣があります。

我が夫はPaolo Michele Giuseppe

ローマ人らしく3つの名を持っています。

誕生日は224日ですが、ローマ人でPaoloなので

629日には皆から祝いのメッセージや電話がかかってきます。

もちろん私も朝一で「おめでとう」

何故か聖ミケーレを祝うことはありませんが

Giuseppe(ジュゼッペ)の日は319日、

ジュゼッペ様はキリスト様の父親なので

この日はイタリアの「父の日」になっています。

だからもちろんこの日もジュゼッペで父親でもある夫に

息子や私は父の日の意味で「おめでとう」

友人たちや同僚はオノマスティコでおめでとうを贈ります。

さて、ピエトロ様はキリスト様から

「あなたは教会を支える礎になりなさい。」ということで、

もともとは漁師のシモーネ(サイモン)さんだったのですが、

イタリア語で石という意味のピエトロという名を授かりました。

そしてもうひとかたはパオロ様。

もとはサウロという名のユダヤ人でローマの市民権を持つ方。

当初はキリスト教徒を迫害する立場でした。

ところが旅の途中で「サウロ、なぜ私を迫害するのか?」

というキリストの声を聞き、目が見えなくなってしまいます。

その後アナニアという方が彼のために祈ると目から

まさしくウロコが落ちて再び見えるようになって

改心したパオロはその後はヘブライ語とギリシャ語に精通する

学力、教養を活かしてキリスト教を広く伝導なさいます。

キリスト様が亡くなったあとで教徒になったので

最後の晩餐の12使徒の中には入っておりませんが、

キリスト教を熱心に外国にも伝授なさった

また、教義をまとめたり使徒行伝を執筆なさったりということで

ピエトロ様と並ぶカトリックではとても重要な方なのです。

そして自ら「小さい」という意味のパオロと名乗られます。

彫刻や絵画では彼の教養を象徴して片手に本をもって

もう片方にはその強い信仰心の象徴として剣が表現されています。

ピエトロ様は、キリスト様から天国の門を開ける2つの鍵を

授かったということで、手に金銀の2つの鍵を持って

表現されます。

こういうことをご存知であればどこの教会に行っても

イタリアだけではなくどこの国に行かれても

キリスト教の教会、あるいは美術館などで

絵画なり彫刻なりをご覧になった時に

どなたを表しているのかということが分かります。

あまり宗教的なことは書きたくないのですが、

2000年にわたって、

キリスト教と共にイタリア人の生活はあるので

どうしても避けては通れないのです。

とにかく、初めに言ったように629日はローマだけの祝日です。

日本にも大きなお祭りなどで祝日様の日があるかと思いますが、

官公庁も全てストップしてしまう日というのは

無いのではないでしょうか?

ここ20年ほど、

日曜や祭日にもローマの中心部のお店が開くようになりましたが

かつては全てのお店が日曜でもないのにお休みで

他の街から入ってくるとなぜだかわからずに驚いてしまうのでした。

他の殆どの街は、そうそうまた横道にそれますが

イタリアでは国の下に州、その下に県、そして市があるのみです。

町、村は存在しません。

つまり私が言っている街というのは市という意味です。

ただ、日本の市に比べるとごく小さい規模の

住民が数百人というような市もあります。

話をもとに戻すと、

他の殆どの街ではその町で一番重要な教会に

その街を守る聖人が奉られているのですが、

ローマの場合はこれも特異です。

ローマの街で一番重要な教会、カッテドラーレやドゥオーモと

呼ばれるのはサン・ジョバンニ・イン・ラテラーノ教会なのです。

サン・ピエトロ寺院はあくまでもヴァチカン市国のカテドラーレ。

サン・パオロ・フォリー・レ・ムーラという

パオロ様に捧げられた寺院がローマの南にあり、

大きさではサン・ピエトロ寺院に次ぐもので、

ローマの4大教会に入ってはいますが、

最重要の地位ではありません。

ついでながらカッテドラーレとドゥオーモ

これらもガイドブック等に出てくる言葉ながら

その違いをご存知の方は少ないかもしれません。

当初のキリスト教徒たちは

信者が集まる場所を単に「家」と呼んでいました。

その家のことをラテン語でDomus

そこで今でもイタリア語でDuomoと呼びます。

その家が増えてきて特にその町で一番重要な司教様が

お使いになる司教座のある教会をその名の通り

Cattedra(司教座)からCattedraleカッテドラーレ

と呼ぶのです。

また、先ほどサン・ピエトロや

サン・パオロ・フォリー・レ・ムーラを寺院と書きましたが、

寺院と教会の違いはその建築様式の違いであって、

どちらもキリスト教の教会です。

古い教会はローマ時代のバジリカ様式という建築様式に沿って

建てられた、あるいはローマ時代のバジリカ(裁判所)を

そのまま利用して教会に改築したりしたのでバジリカと呼ばれ、

それ以外の建築様式、比較的新しい教会は

Chiesa(キエーザ)と呼ばれます。

それ以外にもCasa di Dio(カーサ・ディ・ディオ=神の家)や

Madre Casa(マードレ・カーサ=家の母)など

教会を指す言葉はたくさんあります。

イタリア人とキリスト教徒の深い深い関り合いの現れですね。

次回はうって変わって食べものの話でもしようかと思っています。

Keiko ローマ

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