出たっきり邦人 1545 復活祭

■□■ 出たっきり邦人・欧州編・201836 1545  ■□■

		〓ローマの田舎町から〓

今回の話題:不思議な移動祝日

はじめまして、今回からイタリア・ローマの南端の小さな田舎町より

発信させていただくKeikoです。

19855月にローマにやってきたので在住33年目ですか?!

それにしては未だにイタリア語も怪しいしわからないことだらけですが

見たこと聞いたことをそのままお伝えしていこうと思っています。

日本を離れて時間が経ちすぎ、今の日本人の感覚とはずれていることが

あるかもしれませんがどうかそのあたりはご容赦くださいませ。

また、イタリアは南北に長いので歴史や習慣などにも

各地で大きな違いがあります。

ローマは地理的にはほぼ真ん中、そしてイタリアの首都ではありますが

市民の生活という観点からは

ひとつの小さな町と思っていただいて良いでしょう。

ですからこれまで皆さんがイタリアについてご存知のことと

私のご紹介することに相容れないことが出てくるかもしれません。

料理法や言い回しなどあくまでも

ローマ(の田舎)風だとご理解くださいませ。

初回の今日はあと3週間あまりでやってっくる

復活祭についてお話します。

この話題はほぼ全国区です。^^;

宗教的なことは極力避けたいのですが、

イタリアの歴史や習慣をキリスト教抜きには語れません。

2000年余りイタリア人たちはカトリックと深く

かかわり合って生きてきたのですから。

彼らの生活に染み付いた、

我々日本人ががお正月に初詣をするような感じだとお考えください。

大都会では日曜の礼拝に行く方も少なくなり、

結婚式も市役所でという方々がおられますが

我が田舎町ではやはりまだまだ「神のご加護のもとに生きている」

というように考える方々がたくさんおられます。

そういう姿勢は普通の会話の中に自然に現れるものです。

さて、本題の復活祭ですが、

そもそもキリスト様が亡くなられた日がはっきりしていないので

(キリストが実在したかどうか疑わしいと言う話もありますが

今日は横に置いておいて…)

2世紀に存在したピオ1世が復活祭をお定めになった

と言う説がありますが、

それが4世紀のニケアの公会議で採択されたようです。

その内容は、

「春分の日の直後の満月の直後の日曜日を復活祭とする」

というものです。

春分の日を境に春! という感覚は我々日本人と同じなのですが、

長年この地に住んだ経験から言うと

復活祭が過ぎない限り春はやってこない気がします。

おそらく単純な偶然なのでしょうが

30余年の経験からそう思います。(汗)

少し横道にそれますが、復活祭の前46日間は

四旬節(しじゅんせつ)と呼ばれ禁欲的な生活をして

身を清めてキリストの復活に備えるということで

有名なカーニバルはその46日前に終わりを告げます。

つまり、禁欲的な生活(暴飲暴食をしないが一番)をする前に

羽目を外すのがカーニバル?

カーニバルの開始は毎年17日です。

また、その季節がやってきたら詳しくお話しますが

キリストの誕生が公になった日が16日なのです。

(ご公現祭)

その翌日からカーニバル。

だから、カーニバルの長さも復活祭がいつ来るかによって

1ヶ月の範囲でが長くなったり短くなったりするのです。

カーニバル目当ての旅行をなさる場合、

復活祭の期日を参考になさることをおすすめします。

今年の復活祭は割と早めで、41日です。

ちなみにこれから10年間の復活祭は…

2019年、421日。

2020年、412日。

2021年、44日。

2022年、417日。

2023年、49日。

2024年、331日。

2025年、420日。

2026年、45日。

2027年、328日。

2028年、416日。

お月様が相手ですから約1ヶ月の範囲で移動するのです。

日本にも振替休日などがありますが

休日自体が大幅に変動するというのは驚きですね。

イタリアの笑い話に

「良かったね〜、今年も復活祭が日曜日にあたって。」

というのがありますが、絶対に日曜なのです。(笑)

そして、その翌日をPasquetta (パスクエッタ)

そうそう、イタリア語では復活祭を

Pasqua(パスクア)と呼びます。

で、翌日の月曜を小さなパスクア、

Pasquetta と呼んでこの日も祝日です。

このあたりも旅行のプランをたてるときに

よく考慮してください。

すくなくともイタリアの殆どのお店が

この二日間お休みなりますから。

復活祭当日は教会へ行って、その翌日は屋外でピクニック、

というのが多くのイタリア人たちの過ごし方です。

学校は復活祭前の数日前から一週間の短い春休み。

最近はその一週間を海外で過ごす方たちも多いです。

でも、伝統的には郊外に出て、ピクニック。

パニーノやパスタフレッド、サルーミなどを用意して

春めいてきた陽気を体感、享受するのです。

カーニバルが終わった瞬間に街中のスーパーマーケットや

お店には大きなたまご型のチョコレートが並び始めます。

このチョコレート、中は空洞です。

その空洞にサプライズが。。。

チョコの大きさは手の中に収まるものから

ひとりでは抱え切れないほど大きなものまで様々。

中には町の洋菓子屋さんに特別注文をして、

チョコの中に婚約指輪を入れてもらう人もいます。

私達の友人もそれをしたのですが、

あいにく数年後には破綻してしまいました。。。

もうひとつ、鳩の形をしたパウンドケーキも並びます。

クリスマスにパネットーネやパンドーロを食べることは

日本でもすでにご存知でしょうが

パスクワにはパネットーネと同じ生地ですが

ただ形が平和の象徴のコロンバ(白いハト)

になったものを頂きます。

日本ではおそらくクリスマスのほうが

パスクワ(イースターという方が分かりやすいでしょうか?)

よりも馴染み深いでしょうがキリスト教徒にとっては

キリストの復活ということは何よりも大切なこと。

つまり、数ある年中行事の中でも一番大切な祝日なのです。

ですから準備段階もいくつかあって、

四旬節の初日の水曜日は「灰の水曜日」

復活祭の一週間前の日曜は「パルマの日曜日」

(日本の教会では枝の日曜日とも呼ばれているようです)

この日に教会へ行くと小さなオリーブの枝を帰りに手渡されます。

それを向こう一年間、家の中に飾っておくのです。

なんだか日本で初詣でに破魔矢をもらってくるのに似ていますね。

もともとはキリスト様がエルサレムに入場なさった時に

信者たちがヤシの葉っぱを足元に敷いたり、

日よけとしてアーチを作ったりという故事に基づいているのですが

ヤシの葉は大きすぎますからこの地方にふんだんにある

オリーブになったのでしょう。

ただ、キリスト教の総本山サン・ピエトロ寺院にこの日に行く

機会があれば、正面玄関の大きな大理石の柱に

ヤシの葉が巻かれているのをご覧いただけます。

木曜日は、「聖木曜日」最後の晩餐の日です。

この日、キリストが弟子たちの足を洗ったと言われており、

法王様が、サン・ピエトロ寺院内で

枢機卿がたの足をお洗いになります。

そして、「聖なる金曜日」

この日にキリストさまが亡くなったと言われており

「受難日」「受苦日」等とも呼ばれます。

この日にはキリストの格好をして受難の模様を再現するような催しが

あちこちで繰り広げられます。

法王様が多くの殉教者を出した

コロッセオへ出向かわれるのもこの日です。

最後の「聖土曜日」は、

何もせずキリスト様の復活を待つ日です。

実際に、教会のミサもなければ

結婚式や葬儀なども行わない日だそうです。

ただ、寡黙にキリストの復活を祈る日なのです。

徹夜をして聖書を読みながら過ごすというのが

敬虔な信徒の過ごし方のようです。

以上復活祭前の三日間は特に重要な日々で、

復活祭をどれだけ心待ちにしているかが伺われますね。

冒頭にも書いたように、

今やイタリア人とて全てが敬虔な信者でもなく、

信者ではあっても、こういった習慣をきっちり守るとは

限りませんが、カトリック信者にとってこれだけ大切な時期

なのだということをお伝えしたかったのです。

7週間近くもの禁欲生活を終えて、

復活祭後は陽気も春めいてきて

いよいよ人生を謳歌する季節の到来です!

この時期にイタリアに来られたら

あちこちでこんな言葉を耳にされるでしょう。

Buona Pasqua!」(ブオナ パスクア)

=「良い復活祭をお迎えください。」

***

次回の配信ではローマの生い立ちをお伝えする予定です。

Ciao! (チャオ)

201836日、Keiko (ローマの田舎町より)

HP「イタリアからボンジョルノ」(italia-keiko.net)