日本中が梅雨に入って、さぞかし不愉快な日々をお過ごしのことと思います。
でも、空けない梅雨は無いのだし、過ぎ去らない禍もないはずです。
本来、日本は比較的気候にも資源にも、何より自然に恵まれたところです。
そういうところで、日本人は長く幸せに暮らしてきました。
その幸せを妨害しようとする勢力が、特に近代になって日本にも入ってきました。
それは、戦後さらに勢力を増し、こんにちに至っています。
まだまだ平和な日本国内で、まだまだ正直な人々に囲まれて暮らしている
日本の皆さまには、世界中で起こっている、もちろん日本も巻き込まれている、
恐ろしい出来事に気づいておられないようで、外から見ていると心配でなりません。
そこで、今回はいつもタイムリーな記事を配信しておられる
伊勢雅臣氏の記事を、まるごと掲載させていただきます。
よろしければこれを機に、皆様も伊勢氏のメルマガを受信して、
日本の歴史や、時事問題などに目を向けていただけると嬉しいです。
また、今回伊勢氏が参考になさっている本がこちらです。
以下、伊勢氏のメルマガより、少し長いですが
とても重要な記事なのでどうか、最後までお読みください。
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■1.オーストラリアが中国べったり政策から転換した理由
6月19日、オーストラリアのスコット・モリソン首相は、同国の政府や公的機関などが
国家による高度なサイバー攻撃を受けていると発表しました。[BBC]
「規模と攻撃の性質、使われたスパイ技術から」国家によるハッキングと
専門家は判断しているとし、名指しこそしなかったものの、
「こうした活動ができる国家的な行為者はそう多くはない」と指摘しました。
明らかに中国を念頭に置いています。
新型コロナウイルスの発生源調査を求めるアメリカに、オーストラリアが同調した
ことから、中国は牛肉の輸入を停止し、大麦に関税をかけていました。
モリソン首相は、中国の「威圧」には屈しないと述べています。
6月4日にはモリソン首相はインドのモディ首相とオンラインで首脳会談を開き、
防衛協力の新協定を結ぶことを合意しました。インドはカシミール地方の国境争いで中国と衝突し、両軍で死者も出ています。
日米が主導して中国に対抗する「自由で開かれたインド太平洋」構想に、
両国は足並みを揃えていくでしょう。
オーストラリアは長らく中国べったりの経済政策をとってきました。
それが急変したのは、中国の目に見えない経済侵略に
国民がはっきりと気がついたからでしょう。
その覚醒に大きな役割を果たしたのが作家クライブ・ハミルトン氏の
『目に見えぬ侵略 恐るべき中国のオーストラリア支配計画』です。
日本では、中国の「目に見えぬ侵略」に気がついていない国民が
まだまだ多いのが実態です。
中国は、我が国でも似たような手口を使っていますので、
この本を読むことで中国の「目に見えぬ侵略」がよく見えるようになります。
なぜ、中国の侵略が目に見えないのか。
それは人の頭の中を変えてしまうからです。カネの魔力によって。
■2.キャンベルの国会議事堂前に集まった数万の中国人学生
2008年4月24日、北京五輪に向けた聖火が、
世界ツアーの最後にオーストリアの首都キャンベルに到着した時、
国会議事堂の外の芝生では、何万もの中国系の学生たちが集まっていて、
怒りと攻撃的な雰囲気に満ちていました。
彼らは少数のチベット独立派の人々を取り囲んで、暴言を浴びせかけました。
その場にいた一般のオーストラリア人たちも、中国人学生たちから押されたり、
蹴られたり、殴られたりしました。
「お前らはここにいる権利はない」と言われた人もいたそうです。
オーストラリア人が自国の国会議事堂の前にいる「権利がない」とは、
とんでもない言い草です。
この光景にショックを受けたことが、
ハミルトン氏にこの本を書かせたきっかけの一つでした。
氏は同胞国民に、自分たちの国に何が起こっているのかを分からせようと思い立ったのです。
氏が懇意にしている出版社は企画段階では非常に乗り気でした。
しかし、草稿を送る段になって、出版できないと告げてきました。
中国からの圧力でしょう。
そのあとも2社から断られた後、氏はなんとか出版社を見つけ、ようやく出版できたのが、
前述の『目に見えぬ侵略 恐るべき中国のオーストラリア支配計画』です。
日本でも、同じ年に同じ光景が長野での聖火リレーで起きました。
中国国旗を林立させた数千人の中国人学生たちが、
チベット人と支持団体の人々を襲ったのです。
ハミルトン氏が描く中国の「目に見えぬ侵略」には、
我が国にも思い当たる事が次々と出てきます。
■3.大学での反中発言に目を光らせている中国人留学生
オーストラリアには、2017年7月時点で13万1千人の留学生がいました。
2008年に比べて2倍にもなっています。
彼らは中国人の学生団体(CSSA、中国学生学者協会)で組織されており、
その会合は中国領事館の中で開催され、代表は中国領事によって選出されています。[6215]
オーストラリア全国のCSSA代表たちは、大使館が旅費を支給して首都キャンベラの
郊外に毎年集められ、中国共産党の最新方針の指導を受けているそうです。
中国人留学生たちは、大学での反中発言に目を光らせています。
2017年5月、モナッシュ大学のビジネス人事を教えるアーロン・ウィジェラトネ講師は、広く使われている教科書から小テストを出しました。
それは「中国の政府高官が真実を語ってくれるのはどのような時か?」というものでした。
正解は「彼らが酔っているか、うっかりと口をすべらせた時」でした。
これは中国人だったらよく知っている話ですが、その時に授業を受けていた
ある中国人留学生が腹を立て、SNSに不満を書き込みました。
■4.「領事館を怒らせるような行動や言動は慎め」
メルボルンの中国領事館がこの書き込みを見て、モナシュ大学の幹部に電話を入れ、
「真剣かつ適正に管理」するよう要求し、「今後も引き続き状況を監視していく」
と警告しました。
同大学ビジネススクールのロバート・ブルックス副学長は、
ウィジェラトネ講師を停職処分とし、講座について見直すと表明し、
広く使われている教科書も使用禁止としました。
この大学には、授業料全額を払っている中国からの留学生が4400人も在籍していました。
また、同大学の大学院と研究所を中国国内に設立することを許され、
しかも北京政府がその建設費を出していたのです。
この事件での大学側の全職員へのメッセージは明白でした。
それは「中国はわれわれにとって重要だから、領事館を怒らせるような行動や言動は慎め」でした。
日本でもよく似た事件が起きています。
ある大学で講師が「支那」という表現を使ったところ、
一部の中国人留学生が「侮辱だ」と騒ぎ出しました。
その講師は「支那とは英語のChinaであり、差別語ではない」と説明しても、
「侮辱と感じる」「いやだからやめろ」と聞き入れません。
大学側は講師に「支那」不使用の「お願い」を出しましたが、その講師は拒絶し、
結局、講義は打ち切り、事実上の解雇となりました。
こうして中共政権の気に入らない思想の持ち主は、自国の大学からも排除されていくのです。
「仕事を失いたくなかったら、中共政権を怒らせるようなことをするな」とカネの圧力です。
■5.「中国の友人」たち
カネの魔力で人を操るのは、中共政府の得意技です。
特にオーストラリアでは、元首相や元閣僚級が次々と「中国の友人」にされてきました。
彼らは中国に招待され、旅費は全額中国持ち、中国政界トップとの会談もでき、
王族のような扱いを受けます。
ボブ・ホーク(首相、1883-1991)、ポール・キーティング(首相、1991ー1996)、
ケビン・ラッド(首相、2013)、ボブ・カー(外務大臣、2012-2013)などが頻繁に中国を訪問しています。
引退して本国では権勢を失っても、中国に行けば、まるでもとの地位にいるような接待を受ける。
「精緻化された中国の人間関係のマネージメント術」です。[ハミルトン、7073]
ホーク元首相は引退後、中国企業とのビジネスの仲介を通じて、
2000年代半ばまでには5千万ドル(50億円強)を超える資産を得たと言われています。
保守政党からは「オーストラリアの地方のかなりの部分を中国に売る取引」に関与したと非難されています。
■6.「われわれは中国と仲良くする必要があります」
「中国の友人」たちの任務は、中国企業がオーストラリアに入り込む際の
口利きをするだけでなく、国内で中共政府の代弁者となる事です。
ジェフ・ラビーは在北京オーストラリア大使を務めた人物で、新聞などに
頻繁に意見記事を投稿しています。
ハミルトン氏は本人に会って、歯に衣を着せない質問を浴びせかけました。
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ハミルトン氏:投獄された法輪功の信者たちから内臓を取り出しているという話はどうなんです。
ラビー: まあそれが実際に起こっているという人もいますし、いないという人もいますよね。
実際にどうなのかは私もわかりません。
中国はオーストラリアを支配したいとは思っていません。・・・
われわれは中国と仲良くする必要がありますし、独自の対外政策を採用して、
アメリカについて回ることをやめるべきです。
南シナ海はもうすでに中国のものです。
それに対して抗議したり抵抗したりしても意味はありません。
人口島の軍事施設について言えば、彼らは何もしません。
航行の自由や貿易を誰よりも求めているのが中国ですよ。
彼らがオーストラリアから中国に輸出される鉄鉱石の流れを止めたいと考えていると思いますか?
基地は誰に対しても脅威を与えていません。[7367]
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まさに中共政権のスポークスマンそのものです。
元・駐中国大使として、中国をよく知っているはずの人物が、
このような意見をオーストラリアの新聞で頻繁に発するのですから、
信じ込む国民も少なくないでしょう。
こういう人物に数十億円ほど使っても、政治宣伝費用と考えれば安いものです。
そう言えば、我が国でも元首相で、
なぜか引退後に反原発・太陽光発電推進に熱心な人物が二人ほどいましたね。
原発が動かなければ日本経済は大きなハンディを抱えますし、
太陽光パネルのトップ企業はほとんど中国企業です。
■7.民営化の美名の陰で中国に買収されるインフラ
こうした「中国の友人」たちの宣伝で、中国企業に企業買収やインフラ投資を許すことが
「最もオープンな経済」であるというムードが、財界や政界でも広がりました。
たとえばエナジーオーストラリアは300万人もの顧客を持つ、
オーストラリア西部州の三大電力販売会社の一つですが、香港に拠点を置き、
北京と関係の深い中電集団によって完全に保有されています。
オーストラリアの6つの州のうち、ビクトリア州や南オーストラリア州でも、
中国企業が電力インフラの相当部分を所有しています。
米中間で一朝事あれば、オーストラリアの米国側参戦を牽制するために、
中共政権はいとも簡単にオーストラリアの相当範囲の電力供給のスイッチを
切ることができます。
しかも、外部のハッカーにやられた、とでも言い訳すればいいだけです。
また現在の電力分配は電信サービスと融合しているため、インターネットや電話の盗聴も容易になります。
中国は港湾も次々と手に入れています。
2014年にはシドニーの北方160キロ、世界最大の石炭積出しを行っている
ニューキャッスル港も、中国企業が98年間の使用権を得ました。
近くには軍民共用のウィリアムタウン空港があります。
同様に2015年にオーストラリア北部のダーウィン港、
2016年には同国最大のメルボルン港にも手を伸ばしています。
電力通信や港湾の「民営化」の美名のもとに、
オーストラリアのインフラは中国に切り売りされてきたのです。
■8.「中国の友人」はカネに忠誠を誓っている
このように、中共政府はオーストラリアの様々な分野で「目に見えぬ侵略」を
続けてきましたが、実は中共政権の独裁政治から逃げてきた中国人も少なくありません。
「オーストラリア価値同盟」という組織がありますが、
これは自由を欲してオーストラリアに移民してきた中国人たちの団体です。
その創設者ジョン・フー氏に、ハミルトン氏が「北京に忠誠を誓う」中国人たちについて
聞くと、彼はハミルトン氏の表現を訂正しました。
曰く、共産党の目標を共有して北京の指示に従うようなビジネスマンは存在しない、
彼らは「カネに忠誠を誓う」存在だと言うのです。
オーストラリア国内の「中国の友人」たちも、中共政権が人権を侵害し、
言論と報道の自由を抑圧している事を知っています。
知っていながら目を背け、カネを追求するために中共政権に従っているのです。
上述のジェフ・ラビー氏の発言でも、法輪功信者の人権侵害も
南シナ海への軍事基地設置も無視して、「中国と仲良くする必要がある」と言います。
そうする事で、彼らは数十億規模のカネを手に入れているのです。
多くの国々で、多くの人々が「中国の友人」となるのは、「カネに忠誠を誓っている」からです。
そういう人々は、中共政権にカネがなくなったら、あっという間に逃げ去ってしまうでしょう。
自由、人権、法治などの「価値」を大切にする世界を維持したいと思うなら、
まずは中共政権の金庫を兵糧攻めにする必要があります。
この点では、だいぶ展望が見えてきています。
たとえば中共政権はリーマンショックでは約60兆円もの財政出動をしましたが、
今回の新型コロナ禍ではその10分の1の6兆円ほどしかできていません。
米中対立に危機を感じた外国の資本が急速に逃避しており、外貨準備高も底をついてきたからです。[田村]
また欧米各国がコロナ禍に対する損害賠償を求める動きを見せています。
中共政権が素直に払うはずもありませんが、たとえばアメリカなら
中国が持っている116兆円相当の米国債は返済しないと宣言さえすれば、
それだけの賠償金をとったのと同じ事になります。
さらに習近平はじめ中国共産党幹部が米国、欧州、カナダ、オーストラリアなどに
数百兆円規模の資産を隠し持っているので、それらを凍結するという手もあります。
ただ、こうして中共政権が世界から包囲された時に、
彼らにとって騙して味方にしやすいのが我が日本なのです。
天安門事件直後、中共政府が国際社会で孤立した時に、
日本政府は天皇御訪中を許して復帰のドアを開けてしまいました。
我が国には、それだけ多くの「中国の友人」が政財界、学界、マスコミに潜んでいるのです。
今回は、その愚をくり返さないよう、
我々国民が中共政権の「目に見えない侵略」をしっかり見据えておかなければなりません。
(文責 伊勢雅臣)
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