■□■□■ 出たっきり邦人・欧州編・2018・12・25 1611 ■□■□■
〓ローマの田舎町から〓
ナターレ = クリスマス
配信日がぴったりクリスマスにあたってしまいました。
これはもうイタリアのクリスマスの風景をお伝えするしかありませんね。
まず、イタリア語でクリスマスはNatale(ナターレ)。
メリークリスマスは
Buon Natale(ブオンナターレ)となります。
生まれるという意味のNascereから派生した言葉ですが、
我々普通の人間の誕生日にはCompleanno(コンプレアンノ)
年をいくつ達成したかというような意味合いの言葉を使います。
Buon Compleanno(ブオンコンプレアンノ)が誕生日おめでとう!
つまり、ナターレはキリスト様の誕生にのみ使われる言葉です。
男性の名前にナターレというのがありますが
女性の場合ナターリアになるようです。
イタリア人の名前は例えばMario (男性の名、マリオ)
Maria (女性の名、マリア)と同じような名前の
最後の音だけが変わります。
正確にはMarioは a にアクセントが、
Mariaは i にアクセントが来ますけれど。
男性名は90%くらいは O でおわり、残りが E
ごくまれに A で終わります。
(Gian Maria Volonté のように。)
女性名は外国から来た名前などを除きほぼ100%が
A でおわります。
私の名前Keikoはしばしば男性と間違われ、
通販のパンフレット等にはMr.にあたる
Signoreが頭についてきます。(笑)
話がかなり横道にそれてしまいました。
ナターレの話でしたね。
11月中旬から街にはそれらしきイルミネーションが
照り映えています。
10月の最後の日曜日にサマータイムが終わると
急に日が短くなり、前回ご紹介したように
11月は死者を思う月でもあり
なんとなく寂しげになってきたのをクリスマスに向けての
準備で払拭したいような気がします。
最近、ある電話会社のCMでは人気タレントさんが
「まだ、ツリーやイルミネーションをやってるの?」
というふうに、イタリア人のクリスマスに対する態度も
少しずつ変わりつつあるようですが、
今日は伝統的な、極めて典型的なところをご紹介しておきましょう。
今や商業的ペースでナターレの準備も
年々早くなってきていますが、
昔は12月8日に「マリア様の無原罪のお宿り」という日があり、その儀式が終わってからナターレの準備に入りました。
マリア様の無原罪のお宿りというのはマリア様のお母様
聖アンナがマリア様を身ごもられた日です。
決してマリア様がキリスト様を身ごもられた日ではありません。
マリア様は母アンナの体内に宿った時に全ての人が背負っている原罪を免れた女性とされたので、産みの苦しみを味わうことがなかったと言われています。
原罪とはアダムとイヴが禁断の木の実を食べた時に科せられた罪で、
男性は労働の苦しみを、女性は産みの苦しみを負うことになりました。
伝統的にはイタリアのナターレの飾りはプレセーペという
キリスト様がお生まれになったときの様子を人形たちで再現したものです。
馬草小屋に聖母マリアと父親のジュゼッペ、
そして近所の家畜たちというのがベースで、
24日〜25日にかけての真夜中にその真ん中に
生まれたばかりのキリスト像が置かれます。
この飾り物は1月6日まで飾られて、その数日前にさらに
3人の東方の魔術師たちの像が追加されます。
彼らはキリストの誕生を知っていろいろな高価な
お祝いの品を持ってお祝いにやってきた方々です。
彼らが着いたのが1月6日で、彼らによってキリストの誕生が
世間に公のものになったと言われ、
この ご公現祭は宗教的には復活祭やクリスマス以上に
重要な祭日なのです。
ですから、イタリアの子どもたちは昔はその日にプレゼントをもらいました。
姿は醜いけれど心根の良い魔法使いのおばあさんがほうきにのってやってきて良い子にはお菓子やおもちゃを、そうでない子にはカルボーネという薪や石炭を焼いたあとのかすをくれると脅かされ、みんな良い子にしていたようです。
ナターレはキリストの誕生を祝う日であって、家族が静謐な気持ちで寄り添って過ごす日だったのです。
その僅かな名残が vigilia(前夜)には魚料理しか食べてはいけないという形で残っています。
クリスマスイブのことを vigilia di natale
(ヴィジリア ディ ナターレ)と言います。
今でもクリスマスにはたいていマンマ(おかあさん)のもとに集まります。
結婚すれば双方の親元へ行かなければならないので近ければ片方で夕食をしてからもう片方の家へ行くか、翌日の昼食をもう片方の家で取るかというような形です。
ですからマンマたちはクリスマスイブの分とクリスマスの分とそしてその翌日も祭日ですから約3日分の料理の準備に追われます。
私事で恐縮ですが我が家では息子が27日に生まれたので息をつく暇もなくまた誕生日の準備にとりかからねばなりませんでした。息子は舅たちの唯一の孫だったのでその日にも皆が集まったものです。
さて、クリスマスの典型的な食べ物に今や日本でも知れ渡っているらしいパネットーネというのがあります。
ふっくらしっとりした生地に干しぶどうや干し果物の砂糖漬けを細かく切ったものが混ざっています。
最近はチョコレートやカスタードクリームなどが入ったものも見られます。
また、もうひとつ基本的には中になにも入っていないパンドーロというのもあります。
こちらはカステラに近い感じの生地ですがカステラより少しぱさついた感じです。
パネットーネがズングリした山形のケーキなのに対してパンドーロは上から見ると星形をしています。
クリスマスイブの夕食と大晦日の夕食も魚を食べますが、
同じ魚でも大晦日には結構豪華なメニューになり、
クリスマスは先程も言ったようにキリストの誕生を思って
敬虔に過ごす日なのでカタクチイワシのフライや
ツナソースのパスタなどごく庶民的なものが多いです。
サンタクロースに関しては北欧にその住処があると言われていますけれど、
イタリア(当時はまだローマ帝国)にその昔、
子どもたちにいつも施しをしていた聖ニコラウス
(サン・ニコラウス)という司教がいて
子供の守護神になっていますがこの聖人がモデルだとも言われています。
ちなみにイタリアではサンタクロースではなく
バッボナターレ(ナターレのお父さん)と呼びます。
ナターレの翌日は聖ステファノの日。祝日です。
こちらの祝日は良く出来ていて復活祭も、翌日も続けておやすみとなっています。
ですからヨーロッパの多くの街では12月24日の夕方から
26日いっぱい商店や美術館などもお休みになるところがある
のでこういう時期には下調べをなさっておでかけください。
今の所比較的天候も安定しているようですが、
日本のクリスマスはいかがでしょうか?
そういえば数年前にはある司教様が日本のクリスマスが
美しさでは世界一だと仰っておられました。
日本ではたんにお祭り気分で接するのでそうなるのかも知れませんね。
しかも真面目な日本人はイルミネーションにしてもとことんこだわるようですし。
こちらのイルミネーションもLEDが出てきて
随分様変わりしてきましたがまだまだこのあたりの田舎町では日本には比べ物にもなりません。
日本ではすぐ後に最も重要な新年を迎えることになるので、
クリスマスも一日で過ぎ去ってしまうでしょうが、
こちらではなんとなくお祭り気分が続きながらも日常の生活は27日から31日までほぼ普段通り、
31日には少し早仕舞するところも多いですが、
日本のような御用納め的な感覚はありません。
そして、新年2日からは全く平常の生活が始まります。
でも、街中の飾りも家の中の飾りも1月6日まではそのまま
なので、お祭り気分を引きずって1月7日からは
いよいよカーニバルのシーズンへと移っていきます。
また機会があればそのあたりの風景をお伝えしますが
今日はこの辺で。
どうぞ皆様、平穏な年末年始をお迎えくださいますよう
心からお祈りいたしております。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
Keiko
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スイス・チューリヒからきいろさんです。◆
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